これぞ佐々木、の完全救援だった。シアトル・マリナーズ佐々木主浩投手がタイガース戦で39セーブ目をマーク、7月23日以来1カ月ぶりにメジャー単独トップの座を奪い返した。3点リードの9回表に登板し、打者3人を無安打2奪三振。シーズン終盤に入り不安定な投球をみせたこともあったが、この日は完ぺきな内容でチームの90勝目一番乗りをサポート、優勝マジックを20とした。
3点のリードも、相手の打順も関係なかった。ブルペンで投球練習を終えた佐々木は、いつものように冷水でのどを潤し、大きく深呼吸をしてマウンドへ向かった。
何度もこなしてきた役目。だが、期するものがあった。前回18日のヤンキース戦が、1失点の冷や汗セーブだっただけではない。その試合では右太ももに打球を受け、ボールの縫い目が浮かび上がるほど痛みも跡も残っていた。だが、試合の最後を任された以上、言い訳など許されない。守護神のマウンドの重みは、いつも以上に両肩にのしかかっていた。
先頭のエンカーナシオンを3球で空振り三振、2人目のセデーニョも4球で空振り三振に取った。最後は今季初の3者連続三振を狙いにいった。だが、2番イーズリーの粘りに最後は直球を選んだ。「直前のフォークに意識があるから打者は振り遅れるんです」。打者のバットスピードを分析したうえの配球。結果は力のない三邪飛。3者三振こそならなくとも、危なげなかった。14日レッドソックス戦以来、登板2試合ぶりに3人で終えた。
メジャーを代表する抑え、ヤンキース・リベラをしのぐ今季39セーブ目。1カ月ぶりに、トップの座を奪い返した。1歩リードしたものの、気負いはない。「数字とかは、今の段階で気にしても仕方ないですからね」。それより大切なことがある。頭から離れなかった18日のヤンキース戦は2点リードの場面で登場し、押し出し死球を与え1点差に詰められた。5日インディアンス戦、10日ホワイトソックス戦では連続で救援失敗。昨年も2試合連続で失敗したことはある。今やストッパーとして確固たる地位を築いていても、精神的には追い詰められていた。
抑えを生業(なりわい)としている以上、失敗を悔やんでいても仕方ない。打たれた夜は、寝付きが悪い。横浜時代は、打たれると痛飲することもあった。だが、メジャーの世界はそんなことだけで切り替えはできない。配球や相手の癖などを正確に分析することが、次回への糧。この日、直球とフォークだけで1度もまともにバットに当てさせなかった。
今、佐々木の頭に個人記録はない。「そんなことは気にしてないし、やっぱりチームの優勝だけですよ。今季90勝?まあ、数字のことは(マスコミの)皆さんが考えてくれてればいいんじゃないですか?」。優勝へのマジックはいよいよ「20」。それでもトーンを変えない佐々木の言葉は、待ち受けるプレーオフの厳しさを物語る。目標はまだ先、高いところにある。
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