<プレーオフ、ア地区シリーズ第5戦:マリナーズ3−1インディアンス>
場内に響き渡る「ササキ!」コールで地元ファンは勝利を確信した。マリナーズ佐々木がマウンドへ歩きながら右手を胸に当て「抑える!」と誓う。見慣れたいつもの動作だが、この日ばかりはその胸を握る力が違った。2点差の9回に登板。相手は2番から始まる好打順。集中力が増した。
佐々木「やっぱり自然と気合が入りました。そりゃあ緊張で心臓が飛び出るくらいでしたけど。でもマウンドへ行くと、それまでの緊張がフッと消える。急に体がスイッチONの状態になるんです。なぜだかは自分でも分かりません。」
ビスケルを一ゴロ、3番アロマーはフォークで三振。4番ゴンザレスも三ゴロに抑え試合を締めた。今プレーオフ初セーブで、通算4セーブ目。連日の3人締めで、昨年からのプレーオフ無失点記録も7回2/3まで伸ばした。
佐々木「アロマーを三振にしたフォークは今季一番のフォーク。あれはだれも打てないと思いますよ。外角へシュート気味に落ちるフォークですから、左打者には厳しく最高のボールを投げることができた。」
普段は自画自賛しない男が珍しくまくし立てた。それもアロマーへ今季最高といえるボールを投じたからこそだった。実は昨年11月、日米野球で来日したアロマーから友人として「ササキは研究される。球種を増やすか配球を考えないと通用しなくなる」とのアドバイスを受けていた。その言葉を教訓に、今季の活躍につなげている。
佐々木「きょうの試合は直球とフォークだけで勝負したんですが、アロマーの言葉を思い出して、2、4戦で投げたときにはカーブを入れてるんですよ。それで相手が戸惑ったと思う。彼に恩返しができた。次はアロマーの分まで優勝したいですよ。」
最後の場面ではマウンドでガッツポーズを3度繰り返した。試合後にはヤンキース対アスレチックス戦をテレビ観戦。ヤ軍が勝利を収めると、この日4度目のガッツポーズを見せた。明日からのリーグ優勝決定戦は、昨年あと1歩で敗れたヤ軍と対決する。
佐々木「さあ来い! ヤンキースです。昨年負けた借りは必ず返す。イチローもヤンキースとやりたいと言っていたから喜んでると思う。日本では巨人軍ですから、胸を借りる気持ちで燃える要素はあります。絶対に負けたくない。」
昨年、ヤ軍に2勝4敗で敗れたときにナインは泣いた。佐々木もシャワー室で涙した。その宿敵は、ワールドシリーズ4連覇を狙う王者の貫録で、地区シリーズもアスレチックスに連敗から逆転で勝ち上がってきた。底力はだれもが認める。
佐々木「王者を倒してこそ意味があるし価値がある。それはイチローも同じ気持ちでしたね。」
ヤンキースを倒してのワールドシリーズ出場。夢としてではなく、今は現実にすべきものとしてとらえていた。
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