<ヤクルト3−2横浜>◇8日◇横浜
まさかのシーンが、繰り広げられた。大魔神こと横浜佐々木主浩投手(36)が、3連続被弾を食らった。ヤクルト戦で2点リードの9回に登板。1死後、土橋、岩村、古田に連続でスタンドに運ばれ、逆転負けした。3連続被弾はマリナーズ時代を含めてもちろん初体験。初の3連続セーブ失敗の屈辱ともなった。
神通力はなくなってしまったのか。目を覆いたくなるような光景に、佐々木はマウンド上でぼう然と立ち尽くした。右手を腰に当てながら、3本のアーチをただ見送るだけだった。まさかの3者連続本塁打、3試合連続のセーブ失敗は日米を通じて初の悪夢だった。
「こたえたね…。これが勝負の世界でしょ…。初めてですね」。数々の修羅場をくぐり抜けてきた佐々木にとっても、心に突き刺さる登板になってしまった。「故障とかではない」と、言い訳は1つもしなかった。「ファンが見に来てくれているのに、ここ何試合か裏切る結果になってしまっている。そういうのが一番つらい」と唇をかんだ。
内容的にもキツい3連発だった。土橋には追い込んでからの内角低めフォークをすくい上げられた。岩村も追い込みながら、外角低めフォークを狙い打ちされた。古田に至っては、最初から本塁打狙いでフルスイングしてきた。そこに真ん中低めへ甘い直球がいってしまった。追い込んでからのフォークを完ぺきに打たれるのも、打者にこれほどのんでかかられるのも、かつての佐々木にはありえない姿だった。
ある球団のスコアラーは言う。「昔のミーティングでは、追い込まれてからのフォークを振らなければ四球だからって言ってあった。でも、みんな手を出しちゃうんだよ。どうしてもダメだったね」。ストライクからボールになるフォークを見きれる打者はほとんどいなかった。それが佐々木だった。
この日の最速は142キロ。以前と比べれば落ちるが、日本に復帰した今季はその球速でここまで成功してきた。佐々木は不調の原因を「年なんでしょ」と冗談交じりに話す。年齢が響いているのかどうかはともかく、直球のキレのなさが悪い結果に結びついてしまっているのは確かだ。山下監督も「球速ではなくて、キレが問題なんじゃないかと思う」と語った。それを取り戻さないことには始まらない。「ここまでやってきた選手だし、自分で管理している。修正すべき所は分かっているはず」と調整法は本人に任せる。明日10日からの北海道遠征(阪神戦)に帯同するか、居残ってミニキャンプを張るかなどを話し合うことになる。
「借りを返したい? 返せればね。どういうふうに切り替える? 難しいですね。とりあえず頭を冷やして考えたいこともあるし…」。出会ったことのない困難なカベに直面してしまった大魔神。横浜にとっても勝利の方程式が揺らいでしまうピンチだが、山下監督は「次の機会も使います」と言い切った。信頼は揺らいでいなかった。
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