<マリナーズ5−4アスレチックス>
最後は大魔神が締めた。マリナーズ・イチローのデビュー戦となった今季開幕のアスレチックス戦。8回裏のイチローのバント安打などで1点を勝ち越すと、9回表から佐々木主浩投手(33)も初登板した。いきなり先頭打者のア軍の新人王候補オーティスに中前打を許すが、3、4番を抑えて初セーブを挙げた。メジャー2年目「DAIMAJIN」の貫録を見せつけ、イチローのデビュー戦を祝福した。
あふれる喜びは、派手なガッツポーズに表れていた。「今日は気合が入ってたからね。アレックス(ロドリゲス=現レンジャーズ)が抜けて、今年はこんな勝ち方になるから」。イチローが突破口となった逆転劇を締めたのは、大リーグを代表する守護神となった佐々木だった。
7、8回の終盤で同点、勝ち越しとなれば、地元シアトルのファンは知っている。出てくるのはこの男しかいない。9回表。レギュラーシーズンでは最多4万5911人のファン総立ちの中で背番号「22」がブルペンから、小室ミュージックに乗って小走りに登場した。
イチローと新人王を争うとみられるオーティスにいきなり中前打を許し、無死一塁。昨季のプレーオフから6カ月ぶりのマウンドに「最初はブルッときた」と言いながらも、1発逆転の展開に冷静さは失っていなかった。「同点でも行くと言われてたしね。場面はきつかったけどここは踏ん張らないと、と思った」。昨季43本塁打のJA・ジオンビーに2球続けて直球勝負を挑み、左飛。続く4番サインズをフォークボールで三ゴロ併殺打に仕留め「抑えとして投げた記憶がない」というプロ入り初の開幕戦セーブを記録した。
試合開始、約4時間前の午後3時。グラウンド一番乗りで、すでにアップを終えていた佐々木のもとにイチローが歩み寄ってきた。球場の右翼の変形フェンスを指して「ここに飛びますか」。その問いに、クッションボールの跳ね方、打球処理の仕方を佐々木なりに伝えた。緊張した面持ちのイチローに「そんなに気張るなよ」と冷やかすと「そんなこと言うんなら、バットあげませんよ」と切り返す。軽口をたたき合っていた2人は、その7時間後、固い握手を交わしていた。
米国人記者のイチロー関連の質問攻めにも嫌な顔も見せず、答えた。「彼が出塁して逆転のきっかけをつくった。いい仕事をしたと思う。バントでエラーを誘ったのも足が速いのが(相手球団に)浸透してるからだと思う」。メジャー2年目の風格。シアトル市民の誇りとさえいわれ「DAIMAJIN」も最高のスタートを切った。
◆佐々木の開幕戦登板 日本時代はプロ1年目の1990年(平成2年)中日戦、93年巨人戦と2度ある。勝敗、セーブはともに付かなかった。ちなみに、昨年の初登板はチーム2試合目の4月5日のレッドソックス戦で、翌6日のレッドソックス戦で初セーブを挙げている。
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