<ホワイトソックス3−8マリナーズ>
大魔神がメジャー球史にまた名前を残した。シアトル・マリナーズ佐々木主浩投手(33)がシカゴ・ホワイトソックス戦で5点リードの9回裏1死満塁というピンチに登場。後続2人を抑え4月メジャー月間最多セーブ、12に並んだ。チーム23試合で14試合目の登板過多が心配されるが、今のチームに佐々木は欠かせない。マリナーズは連勝を8に伸ばし、貯金15(19勝4敗)と早くも独走態勢へ入った。
コミスキーパークの右翼後方のブルペンから佐々木がゆっくりとマウンドに向かう。5点リードで迎えた9回裏。出番はないかに思われた。だが、2番手フランクリンが1死満塁のピンチを招いてしまう。ブルペンの佐々木は急いで立ち上がり、投球練習を始めた。ほんの数球で仕上げる緊急登板だが、堂々とした態度に変化はない。初球から球速93マイル(約149キロ)直球を外角へ投げ込んだ。2球目は内角にフォークボールを決めた。制球、切れともに最高だった。打たれるはずがなかった。
代打ベインズを低めに落ちるフォークで空振り三振に取ると、1番ダラムもフォークで遊飛に抑えた。佐々木は笑顔でナインとハイタッチを交わす。5点差があるとはいえ、一打を許せば試合の流れが変わるところ。ピネラ監督が「できれば今夜は使いたくなかったが、彼は常にやってくれる」と言う通り、勝利に佐々木は欠かせなかった。4月メジャー月間最多セーブ記録に並ぶ12S。自己最多タイとなる月間14試合の登板が、チームの快進撃を支えている。
「9回表に1点を追加し、もう大丈夫だと思っていた。キャッチボールはやっていたけど、ちょっと焦ったよ。でも急に出た割には制球も良く、いい感じでいきました」。アイシングを終え、佐々木は涼しげな顔で報道陣に話した。今月まだ2試合を残しており、記録更新の可能性は高い。ただ、質問が記録のことに及んでも関心は示さなかった。「チームが勝っているからいい。調子がいいうちに貯金ができれば、あとの展開が楽になるよ」。口から出るのはチームのことばかりだった。
横浜時代の月間最多登板は1997年(平成9年)8月で、14試合に登板し14セーブを挙げた。元来、夏場に向けて気温の上昇とともに調子も上げていくタイプ。それが、今年は開幕直後からの登板過多となり、今後への影響を危ぐする声も上がる。だが佐々木は「いつもはいまいちの春先から、いい感じ。今年の夏は、どんな球が行くか楽しみだよ」と笑い飛ばした。
この前向きな考え方こそが、佐々木の最大の武器となる。99年、右ひじにメスを入れる際も「おれは手術するたびに球が速くなるから楽しみ」と言ってのけた。楽観主義ではない。不安で頭を抱えるより、常に前を見据え戦っている。今も体は疲れている。だがワールドチャンピオンに向けて、気力は充実し切っている。
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